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生きものの記録

「酔いどれ天使」からからコンビを組んで意気投合し「羅生門」「七人の侍」など多くの名作を担当した作曲家、早坂文雄(はやさかふみお)。ある日彼は、当時ビキニ環礁で行われた水爆実験の感想をポツリとつぶやきました。
「こう生命をおびやかされちゃ 仕事はできないねぇ」
黒澤は病弱な親友の言葉に「はっ」とします。次に自分が撮るべき映画とは何か。唯一の被爆国としてとりあげるべき問題とは。
黒澤の心は決まりました。(生きものの記録が生まれたエピソード)

主人公の老人には三船敏郎。当時35歳だった三船は初の老け役ながら核の恐怖から逃れようともがく老人の悲哀を見事に演じた。

この映画は1シーンを複数のカメラで同時に撮影するマルチカメラ方式で作られました。
「七人の侍」で成功した仕法を本格的に取り入れたのです。自分の心にまっすぐなテーマに新たなる試み。黒澤は地獄に行っても胸を張れるような映画を作ろう。という思いに燃えていました。
ところが映画の完成目前に迫った時、黒澤のもとに思いがけない知らせが入ります。
この作品を生み出すきっかけを与えてくれた親友の訃報でした。早坂文雄(享年四十一)
この作品は早坂の遺作となり、核への警鐘というテーマは黒澤にとって重要なものとなったのです。